久しぶりのK氏のクルマよもやま話、第五話はごく一部地域では評判が良かったクルマ
『プジョー309GTi』です。。。
あまりの懐かしさに涙する人が居たり居なかったり(笑)
ワタシは好きなクルマの一台です。。。プジョー205が大人気だった一方、陰に隠れた存在ですが本文にも有る通り205より実は過激な、でも足は大人な通好みのクルマです!
今日はプジョー309のことを書きます。
車のエンスーでもオタクでもないので、309のようなすこしレアな車を持ったのも縁ということでした。人の出会いと同じです。
生まれてこのかた乗った車でいちばんインパクトの強い車は309GTIだと言うと驚く人もありました。
4ドアノッチバックのジェミニイルムシャーを乗り潰して次の車を探していたとき、知人の車屋を紹介してくれた人がいて見に行くと、スタイルはひどく無骨で地味だけれどスペックその他イルムシャーに似た309GTIがあり、何も知らないまま買ってしまったのです。87年式の初期タイプでした。
欧州車は同じ車でも年式で別物というケースも多く、とくに初期型は理想を追って過激な車になっているということも多い。309も乗るにつれて、そうとうおかしな車だと思うようになりました。
無骨な見かけによらず着座が低い。マニュアルミッションで低速がまったくない。脚の筋肉がしびれるほど重いクラッチをうまくつながないと即エンストです。渋滞などノロノロ走行はほとんど無理。その代わり回りだすとNAのエンジンは体のねじれるエクスタシーで吹き上がります。見かけは農業車に見えそうなのに中身はスポーツカーのエッセンスのように思われました。
初期の電子制御にありがちで、ひとりよがりな技術者の過激な設定になっていたと思う。
それと足回りが凄かった。ねっとりと路面に張り付いており、地球がひっくり返っても落ちない車ではと思った。コーナーはよく曲がりました。
トラブルは少なくなかった。そのころのフランス車にはよくあることで、エンジンがプッツンと始動しなくなることもときどきあった。なぜか押しがけだとかかるので、ひとりで押してかけて問題はなかったのですけれど。AT全盛の今では押しがけの意味も知らない人が居るでしょうね。
重く頑丈そうなクラッチがスポーンと抜けて動けなくなったことも乗っていた五六年の間に三度ありました。ノン(妻)とまだ赤ん坊だった娘と安浦の海に遊びに行って帰り、呉の川原石でとつぜんクラッチが抜け、車屋に電話してそのままJRの電車で川原石駅から赤ん坊を抱いて帰ったものです(車は放置して)。そういったトラブルはそれが当たり前だと思うとなんとも思わない時代でした。
なにが理由だったか忘れましたが、309がとつぜんご臨終になり、急いで次の車を探したとき、姉妹車だからと安易に205GTIを買ったら年式の違いなのか極端に違う車で失敗でした。エンジンがまったくまわらない。腰高で足回りがぴょんぴょんして不快。205はわたしの持った車の中ではよい思い出がありません。
すこしシトロエンのエグザンティアのことを書きます。
205のぴょんぴょんする足が嫌だったものでフラットに走る車に乗りたくなりました。ノンは4ドアじゃないといやと言うしセダンを探すことにした。車屋にその話をするとエグザンティアに試乗してくださいと言われた。八年前くらい前の話で当時でも相当古い前期エグザンティアです。
運転して魅了されました。知人がエグザンティアを所有し助手席には乗ったことはあったのですが、運転して分かる夢のような乗り心地。宇宙空間を切り裂き一直線に進行する気分。またはフランスの新幹線で運ばれているみたいで、自分で運転している感覚がない。勝手に滑るように走ってくれるんです。
AT車に偏見を持っていてそれまでオートマ車に乗らなかったのですが、賢いオートマにも驚いた。軽くアクセルにタッチするだけで自由自在の電動モーターみたい。逆に言うなら自動車としてのおもしろさにはすこし欠けているのかもしれませんが、そのころ人生疲れ気味だったわたしは完全にはまりました。
試乗した車は買わずほぼ同じ94年式で同じ車のずっと安いのをほかで見つけて買いました。そのときコーゾーさんとの出会いがありました。
乗れば乗るほどよい車で、シンプルなダッシュ回りも理想でしたし、シートもシトロエンらしく世界一。ブレーキに独特のタッチがあり、止まるのか止まらないのか分からない感覚で列車のようにいつの間にかスーッと自動停止してくれている味わいもよかった。人によっては気持ち悪いという人もあるかもしれませんが。
軽くアクセルペダルに触れるだけで走りだしますが、ヨイショと動き出して、中速からの胸をすく伸びが気持ちよかった。フッとワープ(空間移動)するような回転域がある。
いちばん気持ちが良いのは田園盆地の七、八十キロ走行ですが、市街地を飛ばしても不思議な安心感がある。ほかの車を超絶する独自の世界でした。
94年式でこれほど完成された車があるなら、その後の車はいったい何をしているんだと思いましたね。
七万キロで買い、十三万キロまで乗って冷却系の不調で同じ年式のエグザンティアを探して乗り換えました。それも六万キロから十二万キロまで乗って、ミッションの不調で降りました。そしてまたエグザンティアを探しましたが、だんだんと大古車になってきて、予算に合う良い車がない。とくにわたしはサンルーフ付きでないといやなので玉が少ないのです。妥協して前期型のC5にしました。
内外装のデザインはエグザンティアのほうが優れていますが、前期C5のバブルなデザインは妻子のためには悪くなく、車の中身も前期型なら同じハイドロとエンジンでエグザンティアとそう変らないのではと思いました。しかしぜんぜん違っていた。
すこしフワフワした足でエグザンティアほどのフラット感がない。ブレーキはストレートに利きすぎてちょっとヒンがない。エンジンの回転も低速から中速まで普通に直線でパワーを感じない。中速域の伸びがいまひとつ。世界一のカーオーディオと思っていたエグザンティアに比べてなぜかひどく音が悪い。ダッシュボードが高くシートも高くエグザンティアより腰高。エグザンティアよりコーナリングがへた。要するにスポーツ性に欠ける。
全長全幅はエグザンティアとそう変らないのに、ぼってりとしたボディで車の大きさを把握しにくい。
と、欠点ばかり書いていますが、マニアに流れない分、高級感はあってハイドロのよさもまったく失ったわけではない。重い車体に二リッターでよく走り燃費もそう悪くない。自分で運転している感覚がなく運ばれているようなのもエグザンティアと同じで楽チン。
でも久しぶりにパリに行ったら街には十年前に製造の終わったエグザンティアはうじゃうじゃ居てC5を見かけないのが不思議でした。
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